コーヒーは薄毛促進?育毛促進?
コーヒーは本当に不思議な飲み物です。
「コーヒーを飲むとハゲる」という説と、「コーヒーは育毛効果がある」という説があります。
この真逆の説は、髪の毛に関してだけではありません。
コーヒーは「体に悪い」という説と「健康に良い」という説も、昔から議論が絶えないのです。
確かにコーヒーは刺激物です。
胃に負担をかけるため飲み過ぎると胃が痛くなったり、ひどい場合は急性胃炎になったりします。
カフェインが入っているため覚醒効果があり、集中力が高まる一方、自律神経を刺激するため睡眠に影響を与えたりします。
また、エナジードリンクなどでカフェインを一気に摂り過ぎて、不整脈や急性中毒により死亡する事件も発生しました。
これほどの刺激物ですから、頭皮や髪の毛にも刺激を与え、薄毛を促進させてしまう可能性もあるかもしれません。
しかし一方でカフェインやポリフェノールの効果で、ガンの抑制、動脈硬化などの予防につながるという話もあります。
ポリフェノールは抗酸化作用や血行促進の効果があります。
血行が良くなれば頭皮の血行も良くなり、育毛にもつながるのです。
コーヒーを飲むとハゲるという説と、育毛効果があるという説。
一体どちらが正しいのでしょうか?
カフェインは髪の毛にとっていいのか?悪いのか?
コーヒーと言えばカフェインが思い浮かぶという人も多いのではないでしょうか?
このカフェインには中毒性があり、摂取しすぎによる死亡例もあるため、身体にとって良くないと言われる面もあるのは確かです。
しかし、身体によいという研究結果も多数報告されており、一概に毒物とは言えないのです。
例えば一般的に広く認識している効果として、覚醒作用があり集中力が高まったりします。
また解熱鎮痛作用があり、血管が拡張する事による偏頭痛などに効果があったりします。
また、以前はコーヒーは心疾患による死亡のリスクが高まると考えられていました。
しかし最近では真逆で、心疾患による死亡リスクが低減するという研究結果が多数報告されているのです。
これはカフェインに「血栓」を作りにくくし、血液をサラサラにする効果があるという研究結果によって明らかにされました。
血栓ができると血管が詰まりやすくなり、心疾患や脳梗塞など血管に関する病気にかかりやすくなります。
これは頭皮も同様で、サラサラで血行が良いほど頭皮に栄養分が運ばれやすく、当然髪の毛の生成や育毛に効果的なのです。
カフェインと育毛の研究結果
そんな中、カフェインと髪の毛の関係性を研究した結果があります。
ドイツのフリードリヒ・シラー大学で、「人の毛包へのカフェインとテストステロンの効果」という研究が行われました。
その結果、カフェインは毛包の成長に大きく影響した事が分かったのです。
フリードリヒ・シラー大学は「カフェインは人間の毛髪成長の刺激になると証明された。この結果はAGAを研究する上で重大な臨床データとなる。」と発表しました。
カフェインは弱った毛根を正常にし、特にAGAの影響で細くなった毛髪を太くするのに大きく影響することが分かったのです。
また2014年にドイツのリューベック大学では、「髪の伸長に対するカフェインの差異効果」を調査しました。
その結果、カフェインが男女ともに、毛包に対する増殖促進効果を明らかにするという事が分かりました。
具体的にはカフェインが育毛を促進し、成長期を延ばし、毛根のケラチンを増やすとしています。
これらの研究結果から、海外ではカフェインはAGA(男性型脱毛症)に効果があると認知され、カフェイン入りの育毛剤や、カフェインシャンプーなども発売されています。
こちらはドイツのアルペシンというカフェインシャンプーです。
カフェインはアデノシンの働きを抑制する
カフェインは眠気覚ましの覚醒効果があります。
これはカフェインが眠気に関係する脳内物質「アデノシン」の受容体と結合し、その働きを抑制してしまうためです。
「アデノシン」は育毛効果があると言われ、日本皮膚科学会での男性型脱毛症診療ガイドラインでもBになっている成分でもあります。
資生堂の「アデノゲン」や「アデノバイタル」といった育毛剤にも主要の成分としてアデノシンが配合されています。
ところが、せっかく「アデノシン」や「アデノゲン」でアデノシンを摂取しても、コーヒーを飲んでカフェインを摂取してしまうと、アデノシンの働きが抑制されてしまうのです。
ですので、「アデノゲン」や「アデノバイタル」といった育毛剤を使っている人は、コーヒーを飲むのは控えた方がよいのです。
ポリフェノールは育毛に効果があるのか?
コーヒーには、ポリフェノールが多く含まれています。
実はコーヒーの成分の中で、含まれる量はカフェインよりもポリフェノールの方が多いのです。
ポリフェノールというのは、5000種類くらいあると言われており、その中でも「クロロゲン酸類」というポリフェノールがコーヒーには多く含まれています。
この「クロロゲン酸」がコーヒーの苦みや渋み、コーヒーの褐色を作り出しています。
基本的にポリフェノールは植物が光合成を行う際に作り出す抗酸化物質であり、強い抗酸化作用があります。
抗酸化作用があるという事は、当然育毛においてもメリットなのです。
よくコーヒーに含まれているポリフェノール成分は「タンニン」と言われたりしますが、厳密にはコーヒーに含まれるポリフェノールは「タンニン」ではなく「クロロゲン酸類」であるという事が最近では分かっています。
他に代表的なポリフェノールはお茶などに含まれる「カテキン」や赤ワインの「アントシアニン」などがあります。
クロロゲン酸は
ダイエット効果(抗肥満作用)
アンチエイジング効果(抗酸化作用)
糖尿病の予防効果
ガン予防効果
抗菌、抗ウイルス作用
血行促進効果
などたくさんの効果がある事が分かっています。
しかしデメリットもあります。
1つは胃液の分泌の活性化です。
クロロゲン酸は胃液を分泌させ、胃の働きを活性させる効果があります。
食事の消化には効果的な面もありますが、胃に負担がかかるため、胃潰瘍、胃酸過多の人にはよくありません。
また空腹時に飲んだり、飲み過ぎることで急性胃炎などに罹ることもあります。
またもう一つのデメリットは、亜鉛の吸収を妨げるという効果です。
クロロゲン酸などポリフェノールには鉄分などミネラルの吸収を阻害する働きがあります。
飲み過ぎると貧血の原因にもなると言われるのはそのためです。
その中でも、特に髪の毛に関係が深い「亜鉛」の吸収も妨げられてしまうのです。
亜鉛は髪の毛の生成にとってなくてはならないミネラルの一種です。
→参考記事:ハゲに亜鉛は重要だが副作用で吐き気がする
亜鉛が不足すると、髪の毛の原料であるケラチンを生成できなくなるのです。
また、亜鉛はハゲの原因とも言えるジヒドロテストステロンを作り出す5αリダクターゼという酵素を抑制してくれます。
つまり、コーヒーを飲んでクロロゲン酸を多く摂ってしまう事で、亜鉛が奪われ薄毛につながってしまうのではないかというのです。
コーヒーは体温を低下させ、薄毛を促進させるのか?
コーヒーは東洋では陰性の飲み物とされています。
緑茶やコーヒーはカフェインの作用で身体が冷えたり、冷え性が悪化する可能性があるのです。
また、コーヒーはそもそも暑い国で摂れる植物です。
基本的に果実なども寒い国で採れるものは身体を温め、暑い国で採れるものは体を冷やすと言います。
またカフェインには利尿作用があることからトイレに行く回数が増え、体温が下がると言われています。
それでは実際にコーヒーを飲むと体温が下がり、その結果頭皮にも影響し、薄毛を促進させるのかというと、非常に考えにくいです。
確かにコーヒーを飲んだ後時間が経つと、自律神経への影響やトイレの回数の増加により、体温が0.1~0.2度ほど下がる可能性はあります。
しかしずっと持続して体温が下がり続けるわけではありません。
慢性的に体温を下げ、それが頭皮にまで影響するという可能性はとても少ないでしょう。
コーヒーが発がん性物質として認定?
2018年の3月にアメリカのロサンゼルスの裁判所が、大手コーヒーチェーン店「スターバックス」などに対し、
「コーヒーに発がん性成分が含まれている」という警告を表示するべき
との判決を下したのは、大きくニュースでも取り上げられました。
覚えている方も多いのではないでしょうか?
最近の研究では、コーヒーは癌に効果があるというのが徐々に通説となってきたのに対し、なぜここで発がん性成分の含有を認める判決が出たのでしょうか?
それはコーヒーにごく微量に含まれる化学物質「アクリルアミド」という成分です。
国際ガン研究機関(IARC)の発がん性分類で「アクリルアミド」は危険度が上から2番目の「2A」に分類されています。
2Aは81種類あり、「人に対して恐らく発がん性がある」というランクで、ディーゼルエンジンの排気ガスや65℃以上の熱い飲み物、紫外線などと同じです。
ちなみに、コーヒー自体は「2B(人に対して発がん性を示す可能性がある)」にランク付けされています。
2Bにはわらびや漬物も含まれています。
大量に摂取すれば問題ですが、そこまで危険と言えるレベルではないでしょう。
カフェインは「3」です。「人に対する発がん性については分類できない」です。
コーヒーはがん抑制効果がある
アクリルアミドの含有により、発がん性があるという表示をしなければならなくなったコーヒー。
しかし以前からコーヒーには癌になるどころか、癌を予防する効果があるという研究結果も欧米などで多く出ています。
また日本の国立がん研究センターの行っている「多目的コホート研究」の中で、コーヒー摂取と死亡の関係についての調査結果があります。
約9万人の40~69歳の男女を約20年に渡り長期追跡した調査です。
その中で、コーヒーを摂取する群は、肝がんの発生率が低くなる事が明らかになりました。
他にも子宮がんの発生の予防にも効果がある可能性が出てきています。
またガンだけでなく、心疾患や脳血管疾患、呼吸器疾患などの死亡リスクも30~40%も減少するのです。
結局コーヒーを飲むとハゲるのか?育毛効果があるのか?
元々コーヒーはアフリカで薬として重宝されていた植物です。
人間の体にとってメリットになる事も多いのも事実なのです。
「毒を以って毒を制する」という言葉もありますが、身体にいい影響を及ばす一方、大量に摂り過ぎると体に悪くなったりするのは、どんな食べ物にも言えることです。
何でもバランスが大切なのです。
コーヒーは1日3~4杯までが良いとされており、それ以上飲むと胃が荒れたりしてあまり良くないと言われています。
また、薄毛に関して言えば、確かに亜鉛の吸収を妨げる作用があるものの、頭皮にとってプラスになる事もあるため、「コーヒーを飲むとハゲる」というのは都市伝説と言えそうです。
逆にカフェインに育毛効果が見られたという研究結果は出ているので、むしろ「コーヒーは育毛効果がある」という方が信憑性が高いと言えます。
しかし、先述したとおりコーヒーは刺激が強い分、飲み過ぎると逆効果になる可能性もありえるので、飲み過ぎに注意しましょう。
ちなみにAGA治療を行うお医者さん数人に問い合わせてみました。
コーヒーを毎日3杯は飲んでいるのですが、薄毛の原因になりますか?
という問いに対し、AGA治療院のお医者さんの回答は
「コーヒーを飲んでハゲたという実例を聞いたことがない」
「コーヒーにAGAの因果関係があるという話は聞いた事がない」
という答えばかりでした。
つまり、「コーヒーを飲むとハゲる」というのは、医学的には全く根拠がない都市伝説であり、お医者さんはそんな説がある事すらあまり知らないというのが現状のようです。
ハゲるのが怖くてコーヒーを控えていた方は、今後は安心してコーヒーを飲んでください!
しかし1日5杯以上の飲み過ぎには気をつけましょう!